2025.7.15 | 食べる

半世紀作りつづけた「らっきょう漬け」 – 大毛島秘伝の味

徳島県鳴門市、大毛島(おおげじま)は、うずしおを望む風光明媚な地。そこでは、古くから小粒で繊細な「玉らっきょう」づくりが受け継がれてきました。ミネラル豊富な銀砂の畑で育った「玉らっきょう」は小玉で白く、歯切れの良い繊細な食感に定評があります。大毛島で50年以上らっきょう漬けを作り続けてきたのが、玉らっきょう農家の西上おばあちゃん。今回、その秘伝のレシピを特別に教えていただきました。

※西上さんは毎年16kg分を仕込みますが本レシピでは家庭向けに1kg分でご紹介しています。

材料・道具

材料(らっきょう1kg分)
らっきょう 1kg(皮をむいた状態)
100g(※塩漬け用。らっきょうの1割)
赤唐辛子 2本(お好みで)
調味料(甘酢用)
宝福一 健康酢(りんご酢) 450ml
砂糖 200g
みりん 20ml
道具
包丁・まな板 各1点
ボウル・ザル 各1点
保存容器(下漬け用) 1個(2L以上の深めの容器)
重石 1個(皿や水を入れた袋でも代用可)
鍋(甘酢用) 1個
保存瓶(本漬け用) 2L容器
計量カップ 1個
清潔な布 1枚
食品用アルコールスプレー 1本(熱湯消毒でも可)

らっきょうの下処理(皮つき・根つきの場合)

※こちらのレシピは「皮・根・葉」が付いた状態の生らっきょうから始めます。すでに下処理されたらっきょうを使用する場合は、【塩水で下漬け(5日間)】へお進みください。

根と葉を切り落とす

包丁で上下の先端(根と葉の部分)を切り落として、形を整えます。

葉(上のほう)は、ふくらみが終わる位置でカットします。根の部分は、ほんの少しだけ切り落とす程度で大丈夫。切りすぎると実がばらけやすくなるので気をつけましょう。

もみ洗い・薄皮をむく(白い実を出す)

らっきょうを流水でやさしくこすりながら、泥や汚れを丁寧に洗い流します。そのまま指先で軽くもむようにすると、表面の茶色い薄皮が自然にはがれてきます。残った皮も、1つずつ手でていねいに取り除いていき、内側の白くてきれいならっきょうの姿になるまで仕上げます

③水気を切る

下処理が終わったら、ざるにあげてしっかりと水を切ります
※写真はらっきょう農家の工場で撮影したものです。業務用の大きなザルや道具を使用していますが、ご家庭では市販のザルやボウルで問題ありません。

塩水で下漬け(5日間)

①容器にらっきょう・塩・水を入れる

らっきょう1kgに対して、塩は100g(10%)が基本です。下処理を終えたらっきょうを深めの保存容器に入れ、計量した塩を加えたら、水をひたひたになるまで注ぎます。

②重石をして密閉、冷暗所で5日間保存

らっきょうが浮かばないように重石をのせます。専用の重石がない場合は、水を入れた保存袋や、お皿などでも代用できます。

その上から蓋をします。蓋がない場合は、ラップやビニール袋で容器の口を覆って密閉しましょう。そのまま冷暗所に置いて5日間保存します。風通しの良い場所が理想です。

塩抜き(2日半)

①ホースをセットし、水を流しっぱなしにする

塩漬けが終わったら水を細く出し続けて、約2日半かけて塩抜きを行います。じっくり塩を抜くことで、らっきょう特有の辛味がやわらぎ、まろやかでスッキリとした味に仕上がります。

※ご家庭で水を流しっぱなしにするのが難しい場合は、数時間おきに水を交換する方法でも代用可能です。

乾燥(半日)

水気をしっかり飛ばす

塩抜きが終わったら、ざるにあげて風通しのよい日陰で半日乾燥させます。水気が残っていると甘酢が薄まり、味がぼやける原因になるので、しっかり乾かすのがポイントです。

⑤甘酢を作る

健康酢(りんご酢)でまったりと仕上げる

鍋に健康酢・砂糖・みりんを入れ、弱火で加熱しながら混ぜます。砂糖がしっかり溶けたら火を止め、自然に冷まします。

宝福一 健康酢 1800ml 1本

宝福一健康酢(りんご酢)を使うと、酸味がまろやかで、味がまったりと仕上がります。

本漬け

甘酢を注ぎ、唐辛子で風味づけ

清潔な保存瓶に、乾燥させたらっきょうをすき間なく詰め冷ました甘酢をゆっくりと注ぎ入れます。仕上げに赤唐辛子を加えて、蓋をしてしっかり密閉しましょう。

※保存瓶は事前に必ず消毒を行いましょう。
【方法1】 煮沸消毒:鍋で瓶を5分ほど煮沸し、自然乾燥させます。
【方法2】アルコール消毒:食品用アルコールスプレー(70〜80%)を瓶の内側にまんべんなく吹きかけ、しばらく置いて自然乾燥させます。

どちらの方法でも、水分が残っているとカビの原因になるため、完全に乾かしてから使用するのがポイントです。

熟成(布をかけて1か月寝かせる)

日陰で静かに寝かせ、味をじっくりなじませる

瓶の上から清潔な布やさらしをふんわりかぶせて、直射日光を防ぎます。そのまま冷暗所で約1か月保存してください。時間が経つごとに味がゆっくりとしみ込み、まろやかで奥深い味わいへと変化していきます。

完成

こだわりの味、毎年の楽しみ

西上さんが50年以上変えずに作り続けてきたらっきょう漬け。その味の決め手は、やはり**“塩水での下漬け”**にあります。そしてもうひとつが、健康酢(りんご酢)を使ったまろやかな甘酢。穀物酢に比べて保存性はやや短め(約1年)ですが、
「毎年新しいらっきょうが採れるんやから、それで十分なんよ」と、西上さんは笑います。

時間と手間をかけて漬けたらっきょうは、ただの保存食ではなく、その土地の風、土、人の手が感じられる、島の味そのものです。

大毛島の玉らっきょう

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西上さん – 鳴となる

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