徳島県鳴門市、大毛島(おおげじま)は、うずしおを望む風光明媚な地。そこでは、古くから小粒で繊細な「玉らっきょう」づくりが受け継がれてきました。ミネラル豊富な銀砂の畑で育った「玉らっきょう」は小玉で白く、歯切れの良い繊細な食感に定評があります。大毛島で50年以上らっきょう漬けを作り続けてきたのが、玉らっきょう農家の西上おばあちゃん。今回、その秘伝のレシピを特別に教えていただきました。
※西上さんは毎年16kg分を仕込みますが本レシピでは家庭向けに1kg分でご紹介しています。
材料・道具
材料(らっきょう1kg分)
らっきょう | 1kg(皮をむいた状態) |
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塩 | 100g(※塩漬け用。らっきょうの1割) |
赤唐辛子 | 2本(お好みで) |
調味料(甘酢用)
宝福一 健康酢(りんご酢) | 450ml |
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砂糖 | 200g |
みりん | 20ml |
道具
包丁・まな板 | 各1点 |
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ボウル・ザル | 各1点 |
保存容器(下漬け用) | 1個(2L以上の深めの容器) |
重石 | 1個(皿や水を入れた袋でも代用可) |
鍋(甘酢用) | 1個 |
保存瓶(本漬け用) | 2L容器 |
計量カップ | 1個 |
清潔な布 | 1枚 |
食品用アルコールスプレー | 1本(熱湯消毒でも可) |
らっきょうの下処理(皮つき・根つきの場合)

※こちらのレシピは「皮・根・葉」が付いた状態の生らっきょうから始めます。すでに下処理されたらっきょうを使用する場合は、【塩水で下漬け(5日間)】へお進みください。

①根と葉を切り落とす
包丁で上下の先端(根と葉の部分)を切り落として、形を整えます。

葉(上のほう)は、ふくらみが終わる位置でカットします。根の部分は、ほんの少しだけ切り落とす程度で大丈夫。切りすぎると実がばらけやすくなるので気をつけましょう。

②もみ洗い・薄皮をむく(白い実を出す)
らっきょうを流水でやさしくこすりながら、泥や汚れを丁寧に洗い流します。そのまま指先で軽くもむようにすると、表面の茶色い薄皮が自然にはがれてきます。残った皮も、1つずつ手でていねいに取り除いていき、内側の白くてきれいならっきょうの姿になるまで仕上げます。

③水気を切る
下処理が終わったら、ざるにあげてしっかりと水を切ります。
※写真はらっきょう農家の工場で撮影したものです。業務用の大きなザルや道具を使用していますが、ご家庭では市販のザルやボウルで問題ありません。
塩水で下漬け(5日間)

①容器にらっきょう・塩・水を入れる
らっきょう1kgに対して、塩は100g(10%)が基本です。下処理を終えたらっきょうを深めの保存容器に入れ、計量した塩を加えたら、水をひたひたになるまで注ぎます。

②重石をして密閉、冷暗所で5日間保存
らっきょうが浮かばないように重石をのせます。専用の重石がない場合は、水を入れた保存袋や、お皿などでも代用できます。
その上から蓋をします。蓋がない場合は、ラップやビニール袋で容器の口を覆って密閉しましょう。そのまま冷暗所に置いて5日間保存します。風通しの良い場所が理想です。
塩抜き(2日半)

①ホースをセットし、水を流しっぱなしにする
塩漬けが終わったら水を細く出し続けて、約2日半かけて塩抜きを行います。じっくり塩を抜くことで、らっきょう特有の辛味がやわらぎ、まろやかでスッキリとした味に仕上がります。
※ご家庭で水を流しっぱなしにするのが難しい場合は、数時間おきに水を交換する方法でも代用可能です。
乾燥(半日)

水気をしっかり飛ばす
塩抜きが終わったら、ざるにあげて風通しのよい日陰で半日乾燥させます。水気が残っていると甘酢が薄まり、味がぼやける原因になるので、しっかり乾かすのがポイントです。
⑤甘酢を作る

健康酢(りんご酢)でまったりと仕上げる
鍋に健康酢・砂糖・みりんを入れ、弱火で加熱しながら混ぜます。砂糖がしっかり溶けたら火を止め、自然に冷まします。

宝福一健康酢(りんご酢)を使うと、酸味がまろやかで、味がまったりと仕上がります。
本漬け

甘酢を注ぎ、唐辛子で風味づけ
清潔な保存瓶に、乾燥させたらっきょうをすき間なく詰め、冷ました甘酢をゆっくりと注ぎ入れます。仕上げに赤唐辛子を加えて、蓋をしてしっかり密閉しましょう。
※保存瓶は事前に必ず消毒を行いましょう。
【方法1】 煮沸消毒:鍋で瓶を5分ほど煮沸し、自然乾燥させます。
【方法2】アルコール消毒:食品用アルコールスプレー(70〜80%)を瓶の内側にまんべんなく吹きかけ、しばらく置いて自然乾燥させます。
どちらの方法でも、水分が残っているとカビの原因になるため、完全に乾かしてから使用するのがポイントです。
熟成(布をかけて1か月寝かせる)

日陰で静かに寝かせ、味をじっくりなじませる
瓶の上から清潔な布やさらしをふんわりかぶせて、直射日光を防ぎます。そのまま冷暗所で約1か月保存してください。時間が経つごとに味がゆっくりとしみ込み、まろやかで奥深い味わいへと変化していきます。
完成

こだわりの味、毎年の楽しみ
西上さんが50年以上変えずに作り続けてきたらっきょう漬け。その味の決め手は、やはり**“塩水での下漬け”**にあります。そしてもうひとつが、健康酢(りんご酢)を使ったまろやかな甘酢。穀物酢に比べて保存性はやや短め(約1年)ですが、
「毎年新しいらっきょうが採れるんやから、それで十分なんよ」と、西上さんは笑います。
時間と手間をかけて漬けたらっきょうは、ただの保存食ではなく、その土地の風、土、人の手が感じられる、島の味そのものです。