阿波すず香 – 幅広い用途に注目が集まる新たな柑橘

阿波すず香は、ゆずとすだちを掛け合わせて作られた柑橘です。徳島県で試験的に作られ、表皮にオレンジ色の斑点があります。ゆず、すだちと同じく、果汁や表皮の風味を楽しむ香酸柑橘類です。ただし、阿波すず香にはゆず、すだちのような個性的な香りがなく、香りそのものも鼻を近づけてかがないと感じられないくらい淡いものですが、皮含めそのままでもストレス無く食べられるほど苦みやクセがなく、幅広い分野に使うことができるのが特徴です。表皮と果汁を使うのが一般的ですが、実も苦みはほとんどなく、やり方次第では利用できそうです。

分類 香酸柑橘
産地 徳島県の山間部
収穫 12月
種の量 少ない
使える部位 主に表皮、果汁
12月の収穫直前に撮影した阿波すず香

収穫時期

阿波すず香は収穫時期によって実の色や風味が少しずつ異なるので、最近までベストとされる収穫シーズンが模索されてきましたが、風味が落ち着き、外見も美しい12月頃の収穫が定番となってきました。現在は収穫された後、すだちや柚子と同じように柑橘農家の人々の冷蔵庫で保存され、4月頃まで入手することができます。

栄養成分

阿波すず香の栄養成分は現在研究段階です。他の柑橘では微量にしか含まれない有効成分が多量に含まれるかもしれないという噂も聞きますが、明らかになり次第追って記載します。

使い方

阿波すず香味噌 – 宮岡香織

風味付けに幅広く使える

阿波すず香はゆず、すだちと同じく、料理の風味付けやジャムづくりなど、幅広く使うことができます。研究会では料理、ジャム、シロップ、お酒など、さまざまな試作が開発されています。試食・試飲会では、多くの商品に対し、美味しいという感動の声があがっていました。これからいろいろな人によってより多くの可能性を模索してもらいたい果実です。

阿波すず香のパウンドケーキ – YUKI FOOD DESIGN STUDIO

スイーツへのポテンシャル

特に面白いのが、ジャムやケーキなど、スイーツへの活用です。苦みやクセのない柑橘の風味は、お菓子の味を損なうことがなく、非常に良くマッチします。すでに地元のお菓子屋さんが阿波すず香のお菓子も販売しており、県外の著名なお菓子屋さんからも、ぜひ使いたいという声がかかっています。

下処理と保存法

カットして果汁を搾る

香酸柑橘である阿波すず香は、部位それぞれを切り分けて使うのが一般的になりつつあります。皮を剥かず、ヘタを横にして2等分し、ボールに果汁を搾ります。果汁は料理の風味付けや、ドレッシングなどに活用できそうです。ゆずやすだちは酢として使われますが、阿波すず香の場合は酸味が少ないので、料理やスイーツの風味付け、ジュース、お茶として使用するのがおすすめです。

果実と皮を分離

果汁を搾ったら、実と皮を分離します。スプーンを実と皮の間に入れて回すと、簡単にくり抜くができます。果実は使わない場合捨てますが、表皮はジャムやコンフィチュールなど、用途に応じて切り分けて使えます。

保存法

果実そのままを保存する場合、10°以下の通気性の良い暗所で保存し、10日~2週間以内に使うことをおすすめします。果汁については冷蔵保存、より長く使う場合は袋に入れて冷凍保存が良いでしょう。果皮も適度な大きさにカットし、ジップロックなどに入れて冷凍しておくと、いつでも好きなときに使うことができます。果汁については酸味が少ないので、冷蔵・冷凍保存しておくと長く使えるでしょう。

これからが楽しみな柑橘

阿波すず香は10年ほど前から試験的に作られてきた柑橘で、まだ本格栽培に至っていない果実で、なかなか手に入れられないのが現状です。生産地である徳島県内でも、多くの人がその存在すら知りません。一方水面下では、お菓子業界の企業や著名な料理人からの注目度は年々高まっており、大量生産を渇望する声も少なからずあります。幸い、近くで手に入りやすい環境にいる編集部では、これからこのサイトを通してさまざまな使い方を紹介し、ぜひこの素晴らしい果実の未来を作る手助けにできたらと考えています。

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